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あきかぜとはは
尾崎士郎短篇集
尾崎 士郎
尾崎士郎『尾崎士郎短篇集』。同一底本的分册已合并为一书。收入:秋風と母、運命について、河鹿、菎蒻、三等郵便局、十三夜、鶺鴒の巣、滝について、叛骨・中野正剛、蜜柑の皮。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 108,032 字 · 216 页
「どこへゆくんです、今頃?」
「それがね」
五十を過ぎている島の顔が青年らしい若々しさに張りきって見えた。「――今、寝ようと思っているところを電話で起されちゃってね、何でも正規軍」
と、言ってから、
「どっちがどうなのか僕にもよくわからないがね、とにかく、帝国劇場を本拠にした一部隊が警視庁と対峙していていつ何が起るかわからないような状態なんだそうだ、ところが夜になって警備の兵士が劇場のそばの料理屋にどやどやと入ってきて今、飲めや唄えの大さわぎをしているというんで万一のことがあっちゃいけないから来てくれというんだよ、――ありがたくないね、今頃からひっぱり出されるのは」
しかし、彼は格別危険におびえているという風でもなく、
「失敬」
と威勢のいい声で片手を帽子にあてたと思うとくるりと向きを変えて急ぎ足にあるいていった。伍一の頭に疲れて酔っぱらった兵卒のむれが食卓をかこんで口々に叫んだり、浪花節を唸ったり唱歌を唄ったりしている情景がうすくさびれた物語の中の風景のようにとぎれとぎれにうかんでくる。石のようにかたくなった雪は道の両側に高くつみあげられ、夜風の寒さの中から酒気に煽られた兵卒のわめきちらす声が聞えてくるようであった。