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あきかぜとはは

尾崎士郎短篇集

尾崎 士郎

尾崎士郎『尾崎士郎短篇集』。同一底本的分册已合并为一书。收入:秋風と母、運命について、河鹿、菎蒻、三等郵便局、十三夜、鶺鴒の巣、滝について、叛骨・中野正剛、蜜柑の皮。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 108,032 字 · 216 页

青空文庫

てきたらしく、「疲れたな!」と呟きながらごろりと横になった。それから急にむくむくと起きあがって、

「今日、来なかったかしら、多吉は?」

「じゃあ会わないんだね、――夕方かえった筈なんだが」

「夕方?」

丈吉の眼が嶮しくつりあがった。「何をしてるんだろう、困っちまうな、――あいつは家のことだけを心配してるんだから、それはそれでいいんだけれど」

前の晩にも多吉は「うなぎ屋」の店で一杯やっているうちに別のテーブルで飲んでいた仕立屋の職人とこんどの事件のことがきっかけで喧嘩をはじめ、「表へ出ろ!」と威勢よく怒鳴って大見得を切ったまではよかったが、表へ出るとすぐにしたたかうちのめされてそのまま路上にへたばってしまったというのである。

「とにかく軽率すぎますよ、あいつはもう自分の一生涯が終ったような気もちでいるんですからね、――もう少し落ちついたらいいと思うんだけれど」

丈吉はヒステリカルな調子でだしぬけに笑いながら、

「とにかく最初の日の威勢のよさったら大へんなものですよ、近所に住んでいる自動車の運転手をうまくだまして、一日じゅう危険区域を乗り廻していたんだそうですからね、運転手もまた妙なやつで、多吉といっしょにいさえすれば何かいいことがあると思ったんですね、到頭二日目の午後になってから大損をしたといってさわぎだしたという