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やねうらのはんにん

屋根裏の犯人

坂口 安吾

――『鼠の文づかい』より――

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,887 字 · 14 页

青空文庫

封じた文をおいて鼠を放すと、これをくわえて後先を見廻し、チョロチョロと座敷を一廻り二廻り走り廻ったのちに、一人の人の袖口へ文をいれました。また藤兵衛が一文銭を投げだして、

「餅かっておいで」と申しますと、鼠は一文銭をくわえて床の間へ行き、三宝の上へあがって一文銭を置きのこし、餅をくわえて戻ってきました。

鼠が物をひくとは申しますが概ね暗闇で行われることで、誰が見たわけでもありません。しかし、こうして公開公演を見せられては否も応もありようがない。妙庵先生が膝をすすめて、

「御隠居、得心がゆかれましたかな。人の身にひきくらべては思いもよらぬ大きな物または重い物を口にくわえ尾にまいて、鼠というものは思いのほかの遠歩きを致すものだ」

婆さんは不承々々にうなずきましたが、やがてキッと顔をあげ、

「なるほど、これを見れば、鼠も銀包みをひいて母家の棟へ隠さぬものでもないことは分りましたが、そのような盗み心のある鼠を母家の棟に飼っておかれる宿主の責任はそのままでは済まされますまい」

「疑いが晴れたならそれでよろしいではござらぬか」

「とんでもないこと。盗み心のある鼠にこの銀をひかれて一年間ただ遊ばせた利子は母家から返済していただかねばなりません。