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やねうらのはんにん

屋根裏の犯人

坂口 安吾

――『鼠の文づかい』より――

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,887 字 · 14 页

青空文庫

こういう風呂ですから、家族の者だけが身体を洗って捨てるようなことはしません。妙庵先生は自分から薬代を要求しない人ですから患者の方から見つくろって礼物をさしあげる。そこで伊勢屋では一年に一度の風呂をさしあげます。物の効用は無限であって、それを発見した者はタダで無限の効用を利用することができます。

妙庵先生が伊勢屋へ参りますと、店さきの土間に風呂桶をすえて、源兵衛さんの母親が釜たきをしている。風呂桶は年に一度しか使わないから、ふだんは土蔵にしまっておきます。

「ようこそおいで下さいました。ただいま湯カゲンを見ましょう」

「これは御隠居、いたみ入りますな」

「昨晩やすむ前にこの風呂桶を土蔵から出してすえまして、今朝は暗いうちから私が焚きつけておりますが、早いもので、もう沸きましたようです。薪をたいて急いで風呂をわかそうなんて方もあるようですが、それじゃア夜と昼とがあるという意味がありませんね。夜を用いて焚きつけますと、午すぎる頃にはもうチャンとこうして風呂がわいております。ちょうどよろしいようですが、カサのある物を一たきして、熱いめに致しましょう」

「これはオモテナシかたじけない」