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やねうらのはんにん

屋根裏の犯人

坂口 安吾

――『鼠の文づかい』より――

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,887 字 · 14 页

青空文庫

とゴマ壇の前へみちびきました。燈明をともして、フスマをしめきると、昼の光はみなさえぎられて、物音も遠ざかり沈々と深夜がよみがえったようでした。

「さて、御隠居。山伏の祈りは、一祈りに身の毛は三本、身の脂は一滴と申して、おのが寿命をちぢめて祈る。祈りの数を重ねてついに身の毛身の脂が尽きはてたときには、その場にアッと叫び、ちょうど熊野のカラスが血を吐いて死するように、五穴から身の血を吐いて絶命いたす定めでござる。さればバンリバリバリと珠数もみくだき、真言秘密のダラニを声高に唱え、身の毛を逆立てて祈るときには、祈りのかなわぬということはない。祈りかなって七日のうちに失せ物の現われるときには、それ、その御幣がおのずからに動きだし、また燈明がおのずから消滅いたす。それが大願成就の知らせでござる。よろしいか。よッく目をとめて見ておられよ」

今でも山伏に火渡りの行事がありますが、山伏は火を渡り風をよび雲にのって通行する。病気も治すし、魔物も払う。山伏の法力というものは、昔は諸人に信ぜられ怖れられていたものです。

易者とちがって、失せ物はこれこれの方角にありますなぞと云うのじゃなくて、法力によって七日のうちに出してみせますと云うのだから、その祈りはすさまじく、身の毛がよだつようです。