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やまだちもんどう

山だち問答

山本 周五郎

「講談雑誌」博文館、1946(昭和21)年6月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,163 字 · 32 页

青空文庫

ゆっくりひと休みしてから、二人はそこを立った。……道はつづら折りになって、片側に森、右側に谷を見ながら、近江のくにへはいった、ちょうどくに境を越したあたりの山蔭になった処で、とつぜん二人のゆくてへ四五人の男が現われて立ち塞がった。左側の叢林の中からとびだして来たのである、……そこだけ月の光が明かあかとさしているので、男たちの風態は鮮やかなほどよく見えた。みんな小具足を着け、武者草鞋を穿き、いかめしい武器を手にしている、その一人の持っている素槍の穂尖が、月光をうつしてぎらぎらと光っていた。

「旦那、賊です、賊です」と、下僕の弥九郎はなかば悲鳴のように叫びながら、玄一郎の背後へ身を隠した。

玄一郎は左手で刀の鍔元を掴み、眼前にいる男たちよりは、左側の叢林の中と背後にある暗がりのほうへすばやく眼をやった。叢林の中にも十四五人いるようだし、月光の届かない背後の暗がりにも十人以上の人数が見える。玄一郎は鍔元を掴んでいた手を放した。

「なんだ、貴公たちはなんだ」

「見るとおりさ」と、玄一郎の問いに対して一人のずぬけた巨漢が答えた、「……それとも駕籠舁き馬子とでも思うかね」