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やまへかえりゆくちち
山へ帰りゆく父
小川 未明
「中央公論」1923(大正12)年12月
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 7,875 字 · 16 页
と、息子は、父親の心をはかりかねて、たずねました。
「私は、国へ帰りたい。」と、父親は答えました。
「お父さん、なにかいけないところがあったら、いってください。また私たちが、気のつかないところがあったら、これから気をつけるようにしますから、もっと、こちらにいてくださいまし。そのうちに、お父さんは、この街の生活にも、おなれでありましょうから……。」と、息子は、ひたすら真心をあらわしていいました。
すると、父親は、頭を振って、
「いや、私は、かえっておまえが国に帰るように、つれにきたのだが、おまえは、帰らないか?」といいました。
「どうして、お父さん、私が、帰ることができましょう?」
息子は、父親の顔を見つめて、あきれた顔つきをしました。
それから、日ならずして、老人の故郷に向かって旅立ってゆく、姿が見られたのであります。
その日は、一日、息子は、家にいて、父親のことを案じていました。
「あんなに、お年をとっていられるから、道中なにか変わったことがなければいいが……。」
「いまごろ、汽車はどのあたりを通っているだろうか……。」
いろいろと息子は、思いました。そして、道すがらの景色などを思い出しては、目に描いていたのであります。