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やまへかえりゆくちち
山へ帰りゆく父
小川 未明
「中央公論」1923(大正12)年12月
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 7,875 字 · 16 页
汽車は、高い山々のふもとを通りました。大きな河にかかっている鉄橋を渡りました。また、黒いこんもりとした林に添って走りました。白壁の土蔵があったり、高い火の見やぐらの建っている村をも過ぎました。そして、翌日の昼過ぎには、故郷に近い停車場に着くのでありました。
「いまごろは、お父さんは、あの街道の松並木の下を歩いていなさるだろう……。」と、息子は、都にいて思っていました。
それは、広々とした、野中を通っている、昔ながらの道筋でありました。年とった松が道の両側に生い立っていました。野の面を見わたすと、だんだん北の海の方に伸びるに従って、低くなっていました。そして、その方の地平線は、夕暮れ方になっても、明るくありました。
山には、せみやひぐらしが鳴いていました。老人は、もう多年この山の中に生活をしています。道すがらの木も、草も、石も、またこの山にすんでいる小鳥や、せみや、ひぐらしにいたるまで、毎日のように、この山道を歩く老人の咳ばらいや、足音や、姿を知らぬものはありません。
父親が、街道を歩いていますと、電信柱の付近に鳴いているつばめは、「いま、お帰りですか。