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いけぶくろのみせ

山之口貘詩文集

山之口 貘

山之口貘『山之口貘詩文集』。同一底本的分册已合并为一书。收入:池袋の店、沖縄帰郷始末記、おきなわやまとぐち、声をあげて泣く、詩とはなにか、装幀の悩み、つまり詩は亡びる、夏向きの一夜、野宿、暴風への郷愁、私の青年時代、ダルマ船日記、チャンプルー。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 44,477 字 · 93 页

青空文庫

どうにもならない予感がするのであった。いっそのこと、きまりわるいけれども兄にこの恋愛のことを訴えて、兄から父を説得してもらう手を考えてみないでもなかったが、兄でも父の頑固さには歯が立つまいとおもうより外にはなかったのである。あれこれ考えた揚句の果てに、おもいついたことがユタなのであった。

ユタというのは、カミンチェとも言われているが、カミは神のことで、神がかりのした女のことを言うのである。家になにかの異変があったりすると、沖縄ではこのユタを家に招いてなにかと願を立てた。熱を出して床につくと、何かの祟りではないかとユタに頼んで占ってもらい、うまくいかないことがあるとまたユタで、願を立ててもらう。ユタはそれを、何代目の先祖の祟りであるとか、どこかでびっくりしたことがある筈でそのとき魂を落したからであるとかと言っては、そのための願を立てるわけなのであるが、ぼくの家でもしばしばユタのお世話になるのであった。

ある日の夕方、ぼくはユタのことを予想して、あることのついでに魔にでも憑かれたふりをして家中を騒がせたのである。こころのなかでは、一刻も早くユタが来るのを願いながら、正気で魔に憑かれたしぐさをすることは、ぼくの場合は生きた芝居なのでなかなか容易なことではなく、誰かに見抜かれはしまいかとはらはらしながらのことな