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いけぶくろのみせ

山之口貘詩文集

山之口 貘

山之口貘『山之口貘詩文集』。同一底本的分册已合并为一书。收入:池袋の店、沖縄帰郷始末記、おきなわやまとぐち、声をあげて泣く、詩とはなにか、装幀の悩み、つまり詩は亡びる、夏向きの一夜、野宿、暴風への郷愁、私の青年時代、ダルマ船日記、チャンプルー。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 44,477 字 · 93 页

青空文庫

のであった。ぼくはからだをがたがたふるわせたり、うつろな眼をして自分でもなにかわからぬことを口走ったりしながら、取り巻いて神妙な顔をしているみんなの様子をうかがっていたのであるが、ユタが来ると、腹をきめて、彼女の名だけを、口走った。そのときユタはぼくの口真似をして、「グジー」と呟いたのである。この一言で、ぼくはまんまとユタを釣りあげ、頑固な父を釣り、兄を釣り母を釣り姉を釣った結果となったわけで、このような形でグジーとの恋愛をみんなに認めさせ、やっと婚約を結ぶことが出来たのであったが、とんだところでユタの恩恵をこうむったのであった。

こうして、恋愛に夢中になっているうちに、おろそかになっていたのが学業で、ぼくはもう一度三年生を繰り返したのであった。そのころは、絵を描いたり、すでに詩もつくるようになっていたが、友達四、五人で「ほのほ」という詩の雑誌を寒天版で印刷して出したりした。ぼくたちは生田春月や室生犀星や藤村の詩なども読んだが、仲間はみんなホイットマンの詩に傾倒した雰囲気をもっていた。そして寄ればすぐに、無産階級とか有産階級とか、搾取とかの用語を口にし、大杉栄の名が出たりしたのである。