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いけぶくろのみせ
山之口貘詩文集
山之口 貘
山之口貘『山之口貘詩文集』。同一底本的分册已合并为一书。收入:池袋の店、沖縄帰郷始末記、おきなわやまとぐち、声をあげて泣く、詩とはなにか、装幀の悩み、つまり詩は亡びる、夏向きの一夜、野宿、暴風への郷愁、私の青年時代、ダルマ船日記、チャンプルー。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 44,477 字 · 93 页
そこにいる間に年代は大正から昭和に変った。
その後、職は暖房屋に変り、鍼灸屋に変り、隅田川のダルマ船に乗ったり、汲取屋になったりしたのであったが、昭和十四年現在の職業安定所の前身であった東京府職業紹介所に就職するまでの十年間は殆ど住所不定の生活をしていたのであって、右に挙げた職はその間にぽつんぽつんとありついたものなのであった。暖房屋のときには、慣性の法則みたいなのが人間の心理のなかにもあることを感じて「無題」という詩をつくり、ダルマ船のときには、陸を食いつめて水上に移り、まるで船頭さんを食っているみたいな自分の姿を見たりして「転居」という詩を書いたり、汲取屋になっては、くさいと言うにはすでに遅かったという詩「鼻のある結論」を書いたりして、「改造」とか「中央公論」などに発表したのであった。
まだ昭和の初めごろのことなのであったが、暖房屋をやめてから鍼灸屋になるまでの間も例によってぼくには住所がなかった。しかし、芝の宇田川町界隈のある喫茶店を中心にして、その日その日を過し、その夜その夜の風の吹き廻しで行き当りばったりの所で睡眠をとったのである。その場所は日比谷公園のベンチの上であったり、知人友人の所であったり、あるいは夜明けまで街を歩いてから、勤めへ出て行く友人と入れ替りにかれの部屋で一睡させてもらったり