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しまもり
島守
中 勘助
「犬 附島守」岩波書店、1924(大正13)年5月10日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,146 字 · 37 页
風がないので日は春のように暖い。萩、うるしがもみじして柏の葉がてらてらと日を照りかえす。あらまし葉を落した山つつじの灰色の幹の群立ちも美しい。滑かな窪地をとおして帯のように雑木が繁ってるのは清水の流があるのだ。草のうえに横になってうっとり眺めてると山やまの嶺に雲が自らに湧いてまた自らにきえてゆく。
三日
夜なかから嵐になった。目をさましたら障子がはずれてるので起きて縄でからげた。枝の音、島の根を打つ波の音、吹き落された鳥のあわただしい鳴声がする。
白根颪が強く吹く日には南の浜は水が濁るので北浦の水をくむ。
夕。一日吹きまくった風がばったりやんだ。わずかに日がさして山も水もしずまりかえっている。と思うまに北風がごうごうと雨をさそってきた。湖水に風脚がみえて日が恐しく暮れてゆく。
四日
朝からしとしとと雨がふる。
午後。うたた寐の夢を板戸をたたく啄木鳥に呼びさまされた。目ざましに香煎をのむ。焚きつけがなくなったので裏へいって杉の葉をひろう。じっとり土についてるのを拾って土間に投げ込むうちに山のようになった。こうして独りくらしてることが身にしみて嬉しい。