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こうじょうしんぶん
工場新聞
徳永 直
「新潮」1932(昭和7)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,771 字 · 16 页
「松本さんは、共産党かしらん?」
タツは、今朝食堂の入口で、この「赤煉瓦」をくれた、工場の書記のことを考えた。彼女は松本に『不在地主』という小説を借りたことがあった。
それ以来、松本は「小説」のことや、いろんなことで、タツを誘った。タツも松本たちに何かタメになるグループがあって、彼女も行ってはみたかったが、何となしに怖いような、それにどっか松本の理屈ッぽいところが好きになれなかった。
「ちょッと、学者、この字は『朗』とも読むんだろう」
ノブ子という肥ったのが、芝生を這い寄るようにして訊いた。タツは仲間から学者という渾名をつけられていた。
「行ってみようか?」
そう思うすぐそばから、新聞などで書きたてられている「共産党」というものの、陰惨な、暗いカゲがのしかかってきた。
「ちょっと、来たわよ」
傍の五六人が、パタ、パタと立上った。向うから、見廻りの『組長』たちが、肩章をヒラつかせて三人ばかりでやって来た。
「芝生に入っちゃダメだよ」
「組長」たちは、作業服が少しもよごれていないで、きれいに『化粧』していた。彼女達は作業しないし、みんな縹緻よしで、美しくしている方が『昇給率』