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まぼろしのかなた
幻の彼方
豊島 与志雄
「中央公論」1922(大正11)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 41,763 字 · 84 页
骨壷はは」]ちゃんと元の位置に在った。彼はそれを両手に抱えて、室の中をうろついた。本箱が眼に止った。小さい方の箱の書物を投り出して、その後へ骨壷をを」]しまった。がちりと錠を下した。その音が胸に響いた。じっと眺めてるまに思いついて、白紙を蓋の硝子一面に張りつけた。清らかな明るみへ出たという感じがした。嬉しかった。
彼は鍵を指先でくるくる廻しながら、竜子の所へ行った。
「おい骨壷をを」]しまったよ。」
「え、何処に?」
「本箱の中に……。硝子に紙をはりつけたら、非常に清らかな感じがするようになった。」
彼女は薄い唇を尖らせ、眼の光を二三度ちらちらさした。それから上目がちに眼を見据えて唇を噛んだ。
「そんなに大切になさるのでしたら、毎晩抱いてお寝みになすった方がお宜しいでしょう。」
彼は赫となった。が、心の底から別の感情が、彼女の言葉に暗示された忌わしい感情が、熱を持って浮び上ってきた。啜り泣きとも憤りともつかないのが、喉元にこみ上げてきた。
それが彼女にも反射した。彼女はいきなり片膝を立てて、彼の方へにじり寄ってきた。
「私の身体をどうして下さいます?」
敵意の籠った抱擁のうちに、彼は身を投げ出した。