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かげのないはんにん
影のない犯人
「別冊小説新潮 第七巻第一二号」1953(昭和28)年9月15日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,032 字 · 23 页
「ママサンはまだ若いんだからね。それに、あの美貌だもの。ボクみたいの青年にママサンなんて呼ばれる気の毒さ。はやく、ただの女にしてあげたかったのさ。アッハッハ」
と、妙に物分りのよいことを言っていた。そこで目を光らせたのは狂六だ。
「ウーム。してみるてえと、前山一作殺しの犯人は絶世の美女かも知れないなア。それだったら、もう、文句はねえや」
「独断的な推理は止した方がよいですよ。殺人なんか、なかったのかも知れないじゃないですか」
「よせやい。やに物分りのよさそうなことを云うじゃないか。ボクも軽率だったよ。この犯人のすばらしさを忘れていたね。とにかく医者が見ても分らないように殺したのだからね。すばらしいことだよ。このすばらしさを忘れちゃいけないね。そして他に犯人の有りうる状況をつくるために、並木先生の診察を拒否したとすれば、これまさに芸術的な名作じゃないか。こッちは、このウチから追放されやしないかと思って、アブラ汗をかいちゃッたからね。トンマな話だよ。並木先生だの玄斎先生なぞに、こんな芸術的な殺人ができる筈はねえや」
「ハッハッハ。一刀彫の彫刻よりも名作らしいですかねえ」