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ごちそうのはなし

御馳走の話

中谷 宇吉郎

正月の御馳走「東京新聞」1954(昭和29)年1月<br>感謝祭の七面鳥「山陽新聞」1954(昭和29)年11月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,746 字 · 6 页

青空文庫

それについて面白い話がある。シカゴの街に世界一、二といわれる大ホテルがある。部屋数が三千近くあって、毎晩ちがった部屋に泊って、八年かかると一まわりするというホテルである。そこの食堂に勤めているコックの人から聞いた話である。感謝祭の晩に、このホテルへ七面鳥を喰べに来る客が年々増えてきて、昨年は一晩に七面鳥を一トン以上も出したというのである。

一トンの七面鳥といったら、たいへんな量である。いくらアメリカの大ホテルでも、一トンの七面鳥を数時間のうちに処理できるような、天火の設備は持っていない。それで仕方なく、大きいボイラーのような鉄の容器に、一トンの七面鳥を放りこんで、過熱水蒸気で蒸したそうである。だいたい蒸し上がったところで、つぎつぎと天火に入れ、表面だけを焦して色をつけて、それをお客に出したというのである。

ずいぶん乱暴な料理であるが、何かそういうことでもしなかったら、とても一晩に一トンの七面鳥の料理はできない。そのコックの人は「感謝祭の晩に大料理店へ行っても、美味しい七面鳥は食べられませんよ」と言っていたが、多分そうであろう。七面鳥と限らず、アメリカの料理は大部分大量生産式に作られているので、概して美味しくない。