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しんじゅう
心中
「中央公論」1911(明治44)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,515 字 · 17 页
「あら。お金さん。目が醒めているの。わたしだいぶ寐たようだわ。もう何時。」
「そうさね。わたしも目が醒めてから、まだ時計は聞かないが、二時頃だろうと思うわ。」
「そうでしょうねえ。わたし一時間は慥かに寐たようだから。寝る前程寒かないことね。」
「宵のうち寒かったのは、雪が降り出す前だったからだよ。降っている間は寒かないのさ。」
「そうかしら。どれ憚りに行って来よう。お金さん附き合わなくって。」
「寒くないと云ったって、矢っ張寝ている方が勝手だわ。」
「友達甲斐のない人ね。そんなら為方がないから一人で行くわ。」
お松は夜着の中から滑り出て、鬆んだ細帯を締め直しながら、梯子段の方へ歩き出した。二階の上がり口は長方形の間の、お松やお金の寝ている方角と反対の方角に附いているので、二列に頭を衝き合せて寝ている大勢の間を、お松は通って行かなくてはならない。
お松が電灯の下がっている下の処まで歩いて行ったとき、風がごうと鳴って、だだだあと云う音がした。雪のなだれ落ちた音である。多分庭の真ん中の立石の傍にある大きい松の木の雪が落ちたのだろう。お松は覚えず一寸立ち留まった。
この時突然お松の立っている処と、上がり口との中途あたりで、「お松さん、待って頂戴、一しょに行くから」