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かいとうおう

怪塔王

海野 十三

「東日本小学生新聞」東京日日新聞社、1938(昭和13)年4月8日~12月4日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 167,635 字 · 337 页

青空文庫

と、『声』の怪塔王は泣きだしそうです。

4

「――盗んだ物を、僕に返せと言うのかい。あっはっはっ、とうとう本音をはいたね。食事にもいけなかったり、また折角の殺人光線灯も役にたたなかったり、黒人が言うことをきかなかったりしたんでは、もう弱音をはくより仕方がないだろう」

と、『顔』の怪塔王は、ほがらかに笑い、

「じゃあ、貴様の頼みをきいて、あれを返してやろうよ。こっちへ来い」

「えっ、返してくれるか」

と、『声』の怪塔王は、大よろこびでじりじりと、近づきます。

「おっととっ、そのまま近づいちゃいけないよ。両手を高く上るんだ。頭より高く上るんだ。さもなければ、僕は貴様の恐れている秘密を黒人に――」

「待て――」

と、『声』の怪塔王は、いたいたしい声でもって叫びました。

「あれを返してくれるなら、なんでも、貴様の言うとおりにする」

そう言って、『声』の怪塔王は、両手を頭の上に高くあげて、しずかに『顔』の怪塔王の方へ近づいて来ました。

『顔』の怪塔王は、それを見て満足そうにほほえみました。相手は降参したのです。

「さあ、ここへ来い。このうしろへはいれ」

と、階段のものかげを指さしました。