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みっつのあざ

怪奇探偵小説名作選1 小酒井不木集

小酒井 不木

小酒井不木『怪奇探偵小説名作選1 小酒井不木集』。同一底本的分册已合并为一书。收入:三つの痣、暴風雨の夜、秘密の相似、卑怯な毒殺、鼻に基く殺人、初往診、呪われの家、猫と村正、肉腫、謎の咬傷、血の盃、人工心臓、新案探偵法、死の接吻、好色破邪顕正、血友病、狂女と犬、犬神、遺伝、按摩、ある自殺者の手記。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 196,140 字 · 396 页

青空文庫

手真似で話をすれば何事もよく通じますし又、その外の文字も知っては居たでしょうけれど、暇さえあれば紙にツノダと書くだけで御座いました。

両親はそれ故、妹を奥の離れ座敷に生活せしめて、少しも世間へ出しませんでした。というのはやはり家代々の言い伝えで、もし唖だということが世間へ知れたならば、その時には一家が全滅するという迷信があったからであります。私たちは二人ぎりの兄妹でして、私は自分が不具であるためかひとしお妹に対して不便を感じ、妹を可愛がりました。そして、妹のことは兎にも角にも世間へ知れずに済んで来ました。

ところが昨年、大地震大火災が起って、一家離散する運命に逢いました。私は妹を背負って逃げ出し、隅田川に二日二晩浮んで居りましたが、そのとき鬼頭さんに助けられたので御座います。父母や召使いたちは皆な死んでしまったものと見えます。今から思えば私たちもいっそ死んで居た方がよかったのです。深窓に育った妹も遂に恐しい世間にほうり出されてしまいまして、私の家の言い伝えのとおり、妹の唖であることが世間へ知れる日が一家の全滅だという迷信が愈よ実現されたように思われました。