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みっつのあざ
怪奇探偵小説名作選1 小酒井不木集
小酒井 不木
小酒井不木『怪奇探偵小説名作選1 小酒井不木集』。同一底本的分册已合并为一书。收入:三つの痣、暴風雨の夜、秘密の相似、卑怯な毒殺、鼻に基く殺人、初往診、呪われの家、猫と村正、肉腫、謎の咬傷、血の盃、人工心臓、新案探偵法、死の接吻、好色破邪顕正、血友病、狂女と犬、犬神、遺伝、按摩、ある自殺者の手記。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 196,140 字 · 396 页
昨日店への出かけに、今日は帰りが遅くなるからという話だったので、書生と女中は十時に寝てしまった。書生は毎朝七時に、大原の寝室へコーヒーを運ぶことになっていたので、今日も同時刻に寝室へ行くとベッドには、寝泊りされた形跡がない。こうしたことは別に珍しいことではなかったので、そのまま帰ろうとしたが、何気なしに書斎の方を見ると、大原は洋服を着たまま煖炉の前に横わっていた。驚いて駈け寄ってみると身体は冷たくなって居たので、とるものも取りあえず電話で警察へ通知したのである。
「物置室の裏にある扉の鍵は、主人だけが持って居られたかね?」と書生の話をきき終った霧原警部はたずねた。
「よく知りませんが、私たちは持って居りません」と書生は答えた。
それから一行は廊下をとおって現場へ来た。警部はまず入口に立って部屋の中を見まわした。日本式に言って、十畳敷ぐらいの室内は、至極あっさりした飾り方であって、金庫と、机と、煖炉と卓子と、三脚の椅子とがあったが、別にはげしい格闘の行われた形跡はなく、黒羅紗の洋服を着た死体は煖炉の前に頭を置き、両足を机の方にさし出して、リノリウム敷の床の上に、仰向けにたおれていた。