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みっつのあざ
怪奇探偵小説名作選1 小酒井不木集
小酒井 不木
小酒井不木『怪奇探偵小説名作選1 小酒井不木集』。同一底本的分册已合并为一书。收入:三つの痣、暴風雨の夜、秘密の相似、卑怯な毒殺、鼻に基く殺人、初往診、呪われの家、猫と村正、肉腫、謎の咬傷、血の盃、人工心臓、新案探偵法、死の接吻、好色破邪顕正、血友病、狂女と犬、犬神、遺伝、按摩、ある自殺者の手記。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 196,140 字 · 396 页
「あなたは断髪の若い女が、昨晩大原さんに麻酔をかけられるところを御覧になりましたでしょう」
「知りません、知りません」といった谷村の声は少し顫えていた。
「あなたは昨晩大へんな間違いをなさいました。大原さんの使われたクロロフォルムの罎と、あなたの罎とをとりちがえてかえりました」
谷村は何か言おうとしたが、言葉が咽喉につかえて出ぬらしかった。
「落ついて下さい。あなたにもう一と言聞いて頂きたいことがある」
谷村の全身は顫え始めた。彼は眼をつぶろうとしたが、それさえ出来ぬと見えて、警部の口もとを見つめるばかりであった。
「あなたは大原の咽喉笛に奥さんの歯を咬みつかせました?」
「えッ!」と谷村は頭を両手で抱えた。「それまでわかったのですか、もう何もかも白状します!」
「大原の咽喉笛に咬みついて殺してやりたい!」
これが谷村夫人の臨終の言葉だったのである。大原伝蔵は先夜、偶然途上で谷村夫人に逢い、御主人にすこし面倒な細工を頼んで貰いたいから、一寸一しょに自宅まで来て下さいといったのである。谷村夫人はそれが恐しい身の破滅のもととなるとも知らず、何気なしに従いて行くと、大原は裏口から洋館へはいって、夫人の油断を見て麻酔をかけたのである。