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みっつのあざ

怪奇探偵小説名作選1 小酒井不木集

小酒井 不木

小酒井不木『怪奇探偵小説名作選1 小酒井不木集』。同一底本的分册已合并为一书。收入:三つの痣、暴風雨の夜、秘密の相似、卑怯な毒殺、鼻に基く殺人、初往診、呪われの家、猫と村正、肉腫、謎の咬傷、血の盃、人工心臓、新案探偵法、死の接吻、好色破邪顕正、血友病、狂女と犬、犬神、遺伝、按摩、ある自殺者の手記。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 196,140 字 · 396 页

青空文庫

大平氏の死体は別室に安置され、親戚や知己の人たちが、葬儀の準備に忙わしかった。兇行のあった部屋は、襖が立てこめてあって、誰も中に入らぬよう、一人の警官が番をして居た。

康雄が署長の名刺を示すと、警官は襖をあけて中へ入れてくれた。そこは八畳の居間で、床の間の脇は押入れになって居てやはり襖が立ててあったが、その襖の前には、黒赤色の血が、畳の上に物凄い地図を描いて居た。捜査中の事件であるから、現場には少しも手を触れてないのである。

康雄は、女からきいたことを思い浮べて、暫くの間、部屋の中央に立ったまま、あたりを見まわした。そうして、次の結論を得た。

犯人は多分、押入の中にかくれて居て、大平氏が、彼女を襲ったとき、突然、襖をあけて、背部から短刀で刺したのであろう。

彼は押入をあけて見た。中は上下二段に区切られて居て、上の段には、二三の道具が置かれ、下の段には夜具が積み重ねられて居たが、向って右の隅に、ゆうに一人の人間がはいれるだけのすき間があった。彼は、その部分を懇ろに捜したけれども、別にこれという手がかりを発見することが出来なかった。

彼はそれからなるべく血痕を踏まぬように歩いて、座敷の前の縁側に出て、奥庭をながめた。