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みっつのあざ
怪奇探偵小説名作選1 小酒井不木集
小酒井 不木
小酒井不木『怪奇探偵小説名作選1 小酒井不木集』。同一底本的分册已合并为一书。收入:三つの痣、暴風雨の夜、秘密の相似、卑怯な毒殺、鼻に基く殺人、初往診、呪われの家、猫と村正、肉腫、謎の咬傷、血の盃、人工心臓、新案探偵法、死の接吻、好色破邪顕正、血友病、狂女と犬、犬神、遺伝、按摩、ある自殺者の手記。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 196,140 字 · 396 页
なにゆえに母が百五十歳までと申したかを私は存じません。とにかく私は母の遺訓をかたく守って、毎日神様に御祈りをして今日に至りました。少しの傷もせぬように、一時の油断もなく暮して来ました。そうして、幸に一度も病気をせず、又、月のものを見ないですんだのであります。私は宝暦×年の今月今日に生れましたから、今日で丁度、満百五十歳になるので御座います。
こういって老婦人は、さびしそうな薄笑いをにッとうかべながら、じっと私の顔を見つめました。私は再びぎょッとしました。満百五十歳という言葉にももちろん驚きましたが、それよりも気味の悪いのは、老婦人の眼の光りでありました。
――ところが、と、隠居さんは続けました。その眼が一層輝いたので、私は何となく身体がぞくぞくして来ました。――今朝、突然、私の月のものを見たので御座います。先生、私の驚きをお察し下さい。私はもう死なねばなりません。けれども先生、どうした訳か、月のものが初まってから、昨日までよりも一層、この世に未練が出来て来ました。私は死にたくないので御座います。先生、どうか、出来ることなら、私を、死ぬことから救って下さいませ。