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うらみなきさつじん

恨なき殺人

宮島 資夫

「新日本」1917(大正6)年9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 27,611 字 · 56 页

青空文庫

「それじゃ、もう別に何も用はないね」と念を押してから、

「萩野君、君はあっちの茶屋に孫根の巡査がいるから、呼んで来てくれないか。どうせ彼奴は見たんだから、後から追かけて来て、逮捕するなんて言われてもつまらないから」と萩野に頼んだ。

「そうですとも、呼んで来ましょう」と言って外に出たが、萩野は間もなく巡査を連れて来た。

「先刻はどうも失礼しました」と、萩野に話を聞いたのか、巡査はニコニコしながら入って来た。

「実は塩子の犯人と言うのはこの男だそうですが、あなた方が帰って行かれてから、自首をすると言って出て来たので、附き添って来たんです。此処でお渡ししても、自首したことになりますかしら」と池田が訊くと、

「ええ、自首にします。私はあれからその、この方面を警戒するように言われて、裏山を廻って来たとこで、丁度好いところでした」

犯人を手に入れた巡査は、嬉しそうに受け合った。

「この男は十九だそうですが、丁年未満だし、自首したとすれば、大したことはないでしょうな」

池田は気遣わし相に訊ねた。

「ええ、そうですとも、それに初犯ではあるし、ことに先方の寅吉の素行も悪かったのですから」