轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
うらみなきさつじん
恨なき殺人
宮島 資夫
「新日本」1917(大正6)年9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 27,611 字 · 56 页
選鉱場の前まで来ると、彼は中を覗いて、
「オイ、おやじ、少し話があるから一緒に行こう」と、帰り支度をしている沼田を急き立てた。沼田は池田の一番親しい仲間であった。真黒な顔に濃い髯を生やしているので、誰もおやじ、おやじと呼んでいた。
沼田がアタフタと、包みと帽子を抱えて出て来ると、二人は急いで山を下った。谷間を過ぎて雑木林の中に来た時、池田はフト後を振り返ったが、誰の姿も見えないので、彼はやっと足をゆるめた。日はすでに高い山のかげにかくれたが、空はまだ昼のように明るかった。林の中からは、漸く涼しい風が吹き初めていた。
「ねえ、オイ、俺はひょっとすると止めなきゃならないかも知れないんだ」と、池田は突然言い出した。沼田は、
「そんな話だろうと思っていた」と、言ったが、
「それでどうするってのよ」と、問い返した。
「別にどうってアテもないんだけど」と言ったが、池田は沼田に何か済まないような気になった。
二人はよくいろいろな不平を語り合った。そんな時に沼田は、この山に来る前に、千島の方で密猟船に乗っていた時のことをよく話した。
「海の方が恐かねえことも多いけど、陽気で好いぞ、ボートの中に寝そべって、大きな浪にこうユタリーユタリとゆられてよ、空を眺めてると下らないことは忘れてしまわあ。