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うらみなきさつじん

恨なき殺人

宮島 資夫

「新日本」1917(大正6)年9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 27,611 字 · 56 页

青空文庫

その他の誰も、余り多くを言わなかった。

「この中で誰かこんな事を言ってやった人があるなら、自分だって言ってくれないか、でないと僕はいろんな邪推をしなきゃならないから」と、池田は妙に温和しく言った。

けれども誰も黙っていた。

「君達でなきゃあ、やっぱり所長かな」と、池田は独り言のように言った。所長というのは、鉱主の妻君の兄で石山と言う男であった。三月ほど前にこの山の所長として来たのであったが、何時でもブツブツと見当違いの小言を言って歩いては、事務員の反感を買っていた。終には義理の弟に使われる低能児として、誰でもかげでは彼のことを低能と呼ぶようになって了った。

多くの人が集って暮している処には、誰か一人、侮蔑か憎悪の的になるものがなければならない。池田は今まで幾度かその的になって来た。けれども石山が来てからは、事務員の反感が石山に向った代りに、石山からは憎まれ者として目指されるようになった事を彼れはよく知っていた。

今度のことも恐らく石山の仕業だろうと思うと、彼は早く村に帰って何かしてみたくなっていた。

五時になると、彼は誰よりも先きに見張りを出て馳け下った。