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あくりょうものがたり
悪霊物語
江戸川 乱歩
「講談倶楽部」講談社、1954(昭和29)年9月増刊
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,207 字 · 17 页
妖美人
ポケットから取り出した鍵でドアをあけようとしているのだ。
「このあいだ電燈会社と喧嘩をしてしまいましてね、電燈がつかないのです。少々暗いが、我慢して下さい。もっとも、わたしは夜は仕事をしませんから、電燈がなくても、べつに差支えありませんがね」
弁解をしているうちに、ドアがひらくと、彼は燭台をヌッとこちらへさし出して、しばらく、じっと蘭堂の顔を見つめていた。
「びっくりしてはいけませんよ。なにしろ蝋人形というやつは、ちょっと気味のわるいものですからね」
警告するように云って、部屋の中へはいって行った。蘭堂は年甲斐もなく、少し怖くなって来たが、それがまた、たまらない魅力でもあった。彼はオズオズと老人のあとにつづいた。
妖美人
燭台の蝋燭が部屋の中をソロソロと動いて行った。その光の中へ、何もない床や、粘土のかたまりや、彫刻用のコテや、石膏のかけらや、いろいろのガラクタが、次々と現われては消えて行く。そして、ピッタリ光が動かなくなった。そこに異様な物体が横たわっていた。大きなものであった。
「これ、なんですか」
気味がわるくて、黙っていられなかった。
「よくごらんなさい。