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あくま
悪魔
小川 未明
「新文藝」1910(明治43)年5月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,591 字 · 16 页
重苦しい機関の響が聞えて来る。鼻を劈く石炭酸の臭いは、室の中に込み上った。障子に浸みた消毒水の痕は、外の暗くなりかかった灰色の空の色を染ませていた。暗いランプが二階に点った時分女は戸板に乗せられてこの会社の門を出た。二階からは、鼻の低い女、薄ぺらな唇の女、円い青い顔の女らが顔を出して見送っていた。中の一人が、なにやら甲高な声で言った。すると二三人の女の顔が、崩れて笑った。
監督が叱ったと見えて、一時に女共の顔は引込んだ。そして硝子戸が落ちた。ランプの輝きが見えた。
女は白い毛布を頭から掛けられて、亜鉛の垣に添うて、寺の方へと道を行った。先に警官と医者が立ち、傍に村長が付いて行った。女は毛布を払って、空を見ようともしなかった。
ちょうど、その時、寺の栗の木の頂きが破れて、青い空が見えていたのに。
村長は、黙って女の傍に付いて、下を向きながら考えて歩いた。警官と医者とは、時々話をした。戸板が村を出て、広い田圃の細道にかかった時、女はわずかに眼を見開いた。もう、人の顔がわずかに分った頃であった。荒涼たる雑木林が悲しみの色に薄黒く浮き出ていた。
村長は、女に向って、