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あくまのでし
悪魔の弟子
浜尾 四郎
「新青年」1929(昭和4)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 25,202 字 · 51 页
私は其の当時から現在の所で、郊外の小さな家を借りて暮していたのでした。
斯うやって表向きは此の若い夫婦は、無事に平和に世を送って行かれそうに見えたのです。又私自身にしろ、そう思っていたのでした。
然し、噫、それは全くの空想でした。私は自分が悪魔の弟子であることを忘れていたのでした。
丁度半年ほど過ぎてから、私は何となく自分の妻に対し不満をもちはじめました。素より惚れて女房にしたわけではないのですから、私は妻をひどく好いていたわけではないのですが、然し憎む気などはさらさら無かったのです。
ところが、同棲して暫くたつと、妻が鼻について堪らなくなってきたのです。新婚の夫婦が、はじめ仲がよかったのにも拘らず、だんだんお互に鼻について来るということは、世の中にはざらにある例で、少しも不思議はないと思われるでしょう。けれども私の場合はそれとは全然意味が違うのです。
先にも申した通り、露子は妻としては実に貞淑で、従順で、善良なのです。ところが、一番、私がたまらなくなり出したのは、其の貞淑、従順、善良、そのものなのでした。私は露子がおとなしいのが憎くなって来たのです。