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あくまのでし

悪魔の弟子

浜尾 四郎

「新青年」1929(昭和4)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 25,202 字 · 51 页

青空文庫

貞淑なのが癪に触りはじめて来たのです。彼女の善良さは何ものにも増して私をたけり狂わせはじめて来たのです。

私はこの時、あなたによって蒔かれた種が、私の心の中でいよいよ成長しはじめたのを感じました。私は自分で恐ろしくなりました。どうにかしなければならぬと感じました。然しどうして此の不思議な苦悩から逃れられるでしょう。

土田さん、私は異性に興味をもたぬあなたは、無論今でも独身で居られることと信じます。従って、いとわしい妻をもつ夫の苦悩がどんなものだかと云うことについては、全く想像がつかないかも知れません。けれども、世の常識に従えば、とり立てて云える欠点のない人間、いや却って美点をもっている人間が、たまらなく憎い気持は、私の師たるあなたには無論お判りでしょう。

私は妻を捨てようとしました。けれど露子は私からどうしても去らないのです。外にすきな女が出来たのならつれて来てもいい、女中としてでも側にいたい、と云ってきかないのです。口で云って追い出すことの出来ぬのが明かになってから、私はあらゆる方法をとって彼女が自身で出てくれるように試みて見ました。しかし之も全く無効に終りました。