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あくまのでし
悪魔の弟子
浜尾 四郎
「新青年」1929(昭和4)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 25,202 字 · 51 页
斯くして呪うべき三月二十六日の夜が来たのでした。
私は出来るだけの用意周到さを以て事をはかりました。私は医者ではありませんからよくわかりませんが、自分の経験で催眠薬が、空胃の時の方が一層効くという事を知っていました。
夕食の時妻に、
「お前、余り食べると夜眠れないんだぜ」
と注意してやったので、この親切に感じたか、露子は一杯の飯しか食べませんでした。
いよいよ夜は来ました。実行すべき時です。
私は其の時も、どの程度に薬をのませたら最もたしかであるかという事をなお考えていたのです。然し結局薬については知識のない私には、(仮りにあったとしても、現在自分の呑んでいる薬が何であるかを知らないのですから、結論に達しよう筈はないのですが)大体の見当よりつきませんでした。それで先ず私はいつも自分が呑んでいるだけ、即ち私にとって十日分――茶さじに五杯――を呑ませることに決心しました。
丁度夜の十時半頃でした。
「お前眠れないそうだが、俺の呑む薬をのんで見ないか、俺も今のむから、お前もお呑み」
出来るだけ自然にこの言葉を発したのです。
「はい」
従順な露子は床をとりながら返事をしました。