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あくまのでし

悪魔の弟子

浜尾 四郎

「新青年」1929(昭和4)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 25,202 字 · 51 页

青空文庫

「しめた、これでいい」

床をとり終った露子が火鉢を隔てて私と対した時、私は例の罎を取り出しながら、先ず自分で茶さじに五杯だけいきなり粉末を呑んで見せました。然し、流石の私もこのように亢奮している夜に、これで眠れる自信がなかったので、更に一さじのみ終ってから、紙を出して露子に丁度五さじの薬を与えました。露子は黙って其の薬を見ていましたが、その時ふと私にある思い付が浮んだのでした。

今から思えば、あの時のあの思いつきこそ私にとって大破綻を醸すことになったのでしたが、其の時は自身素ばらしい思い付であると考えたのです。

それは斯ういうことです。私が薬をのんでねてしまった後まで、妻がおきていたということをそれとなく誰かに知らせておくのです。さすれば私が露子に薬をのましたという万一の疑がおこった場合に、必ず有利になって来るわけです。私はいきなり、

「ねえ、近江屋へ行ってエーアシップを三つ買って来てくれないか」とこう云ったのです。

近江屋というのはうちから二丁ほど離れた所にある煙草屋です。そこにはいつも必ず主人が店にいる筈なのです。その主人は私の碁敵で、いつもよくひまの時烏鷺を戦わせていたのです。