轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
おろかないちにち
愚かな一日
豊島 与志雄
「太陽」1920(大正9)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,045 字 · 29 页
」
瀬川のその笑いに彼は冷たいものを感じた。それから自分を病人という普通名詞で呼ばれたのに対して、軽い反感が起った。その冷かさや反感はやがて、彼を憂欝な気分に引き入れてしまった。彼は心とあべこべな口の利き方をした。
「今日はゆっくりしていってもいいだろう。」
「そうだね、別に急ぎもしないけれど……。」
「それでは泊ってったらどうだい。」
「然しいつも邪魔ばかりしてるからね。」
「なに構やしない。僕は退屈してる所だから。」
それから彼は黙り込んで、ぼんやり天井板を眺めながら、また時々妻と瀬川との話の音声を耳にしながら、鬱屈してくる感情の底で考えた。――瀬川こそ自分の親友だ。忙しい中を度々訪れて来てくれては、大抵一晩位は泊っていってくれる。而も肺結核という自分の病気を恐れもしないで、一緒に食事をし、一緒に寝転んで、距てない話をしてくれる。然し、そういう瀬川の友情を喜び感謝しながらも、なぜ自分は彼が来ると一種の気づまりを感ずるのであろうか。彼が余り長居するのがいけないのであろうか。平素の淋しい自分は彼の長居を却って喜ぶ筈ではないか。また彼とても、仕事の合間合間の気晴しに、別荘にでも来るような気で、自分を訪ねてくれるのではないに違いない。