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おろかないちにち

愚かな一日

豊島 与志雄

「太陽」1920(大正9)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,045 字 · 29 页

青空文庫

所がそれに気付くと同時に、僕は頭がぐらぐらとして、真逆様に地面に落ちてしまった。」

「それから?」

「落ちると同時に眼が覚めてしまった。」

「変な夢ね。」

「全く変な夢だよ。」

「おかしいわ。」

「何が?」

「実はさっき瀬川さんから馬について妙な話を聞いたのよ。」

「うむ。」

「瀬川さんのお友達のまたお友達ですって、肺結核で長く患っていらしたが、どんな手当をしてもよくならないで、だんだん悪くなって、しまいには入院なすったそうですの。何でも長崎とか云っていらしたわ。そして愈々もう手当のしようもないという時になって、其処の院長さんが、最後の試みに或る療法をされると、それですっかり直っておしまいなすったそうです。その療法というのは、馬の脊髄を取って注射するんですって。そういう説は前からあるにはあったんだそうですが、そのためにわざわざ馬一匹殺さなければならないから、実際には余り応用されたことがないとかいうお話ですわ。」

「なんだつまらない。」

「でも本当に利目が確かでしたら……。」

「僕にやったらどうかっていうんだろう。」

「ええ、余り長くお悪いようですと。」

「然し実際効能が確かなら、今迄に随分行われてなけりゃならない筈じゃないか。