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けんせいのほんぎをといてそのゆうしゅうのびをなすのみちをろんず

憲政の本義を説いてその有終の美を済すの途を論ず

吉野 作造

「中央公論」中央公論社、1916(大正5)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 85,839 字 · 169 页

青空文庫

選挙権を極端に制限しておっては、せっかく選挙権の尊ぶべき事を説いても、国民の多数はこれ我に関わりなき問題なりとして深く意に留めぬだろう。ちょうど徴兵制度を布いてない英国の労働者が、自らの仲間から出征軍人を出さないために、頗る戦争に冷淡であるのと同様である。選挙に興味を有たしめ、選挙道徳に多大の注意を払わしめんとするには、どうしても広く選挙権を一般に与うることが必要である。この事は後に選挙権拡張を論ずる際に更に精しく説くの機会があろう。

これと牽連して、モ一つ注意すべきことは、人民に与うるに各種の意見を公平に聴取するの機会を以てするの必要なることである。換言すれば思想の自由、言論の自由を尊重して、人民をして妨げなく各種の意見に接し、その間に自由の選択、自由の判断をなすことを得せしむることが必要である。予輩が先に選挙道徳を鼓吹するの必要を説きたるは、国民をして最も公正なる判断をなさしめんがためである。利益や脅迫に動かざらんことを希望するからである。しかしせっかく人民の心的準備が出来上っても、言論の自由が重んぜられずして、或る一種の思想、殊に民本主義の要求には余り適合しないような思想のみが、人民の眼前に現わるるようでは、やはり好結果を齎すことは出来ない。