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わがやのらくえん

我が家の楽園

久生 十蘭

「オール読物」1953(昭和28)年1月〜6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 90,195 字 · 175 页

青空文庫

女中部屋へ行って、淡色の制服まがいの服に着換え、両腕をむきだして出てきたが、エプロンの肩の蝶結びのところを指でチョイチョイつまみながら、健康そうな横顔を見せ、賢夫人と立ち話をしているところなどは、美しすぎて、いやになるくらい。あっさりいってしまうと、いくら器量自慢でも、千々子さま程度の出来では、メードの足もとにも及ばないというわけなのであった。

第一印象は処女……あまり、あてにはならないが、そういった感じ。すべすべに洗いあげた、子供のような生地の顔に、クッキリと眉だけひいている。ヴォリュウムのある身体つきで、田舎で暢気に育った証拠に、手足がのびのびと発達している。見せかけのアメリカン・ライフの枠のなかで、石田一家のために働いてくれるのかと思うと、勿体なさすぎて冥利につきるような気がしたが、まったく、どういたしましてといったあんばい。三日間のお目見得のあいだは、ぽってりと肉のついたおちょぼ口をして、かわいらしいくらいのひとだったが、住込みときまると、たちまち、すごい威力を発揮しだした。

その日から、石田家の朝食は午前七時、昼食は午後一時。夕食はぐっと早くなって、五時半から七時までの間……というぐあいに、米軍宿舎の時間割通りに、余裕もユーモアもなく、厳格に実施されることになった。