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わがやのらくえん
我が家の楽園
久生 十蘭
「オール読物」1953(昭和28)年1月〜6月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 90,195 字 · 175 页
ヘンリ清水は、おさまりかえった顔で、
「エルマンなどは、後口も後口、食卓のコースなら、デザートのアイス・クリームといったところなんで……シュラーがアメリカへ帰ったのは、一昨年の冬ですが、いいくらいに遊ばれたことがわかったもんだから、それで、ぼうとなって、誰彼の見さかいがつかなくなり、東側の地境になっている垣根の壊れたところから、ひょろりと入りこんでは、この収用住宅に住んでいるやつに、片っぱしから因縁をつくった……ご承知のように、いきなり引抜きになって、なにもかもお眼にかけっちまうんだから、話の運びは早いでさ」
賢夫人は、腹をたてたときの冷酷な顔つきになって、
「それは初耳でした……すると、お隣家の太田さんの親娘がシュラーをおさえつけて、千々子に逢いに来るのを邪魔している……そういう意味なんですね?」
「あっさりいっちまえば、まァ、そういうこってす。一週間ほど前から、太田の女親分があたしを疎外するようになったので、妙だと思っていたんで……それァ、そうでしょう。ご本尊のシュラーを握ってしまえば、あたしなんかと組むことはいらないから……こんなことをいうと、お腹だちになるかもしれませんが、ミドリという娘も、こちらの千々子さまと負けず劣らずで、あれでよく働く鵜なんです」