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わがやのらくえん

我が家の楽園

久生 十蘭

「オール読物」1953(昭和28)年1月〜6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 90,195 字 · 175 页

青空文庫

た。

賢夫人はやめない。肥りすぎた物臭さのせいで、億劫がって、めったに口をきかないが、はずみがついてころがりだすと、とめようにもとまらなくなるのである。

「言いかけたついでだから、洗いざらい言わせていただきますが、この間の試験だってそうです。高級官吏試験虎の巻、なんていうあやしげな本を読んで、準備ができたらしいようなことをいって、胡魔化していらしたけど、あんないい加減なことじゃ、落第するのがあたりまえです。法規運用問題のほうはともかく、かんじんの農林関係の統計問題が、一つもわからなかったなんて、いくらなんでも、ひどすぎるじゃありませんか」

「法の根拠や範囲について、原則や習慣が確立していないと、手も足も出ないのが官吏の特性なんだから、これァどうしようもない。何事にも、しっかりした規定があって、それに従って動くようにばかり躾けられてきたのだから、官吏試験などという事例のないことは、俺にはできない。落第したって、べつに恥だとは思わないね」

「恥でないかもしれないけど、いやですね……試験をいい加減になすったのは、首を切られたって、アメリカの家賃で楽々食えると、あてにもならないことをあてにして、いい気になっていたからでしょう……その結果が、このとおりです。