轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

わがやのらくえん

我が家の楽園

久生 十蘭

「オール読物」1953(昭和28)年1月〜6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 90,195 字 · 175 页

青空文庫

見たかぎりでは、六坪ほどの、変哲もない真四角な地下室だが、西側の壁に隠し扉のようなものがあって、そこを突けば、自然に裏庭へ抜けられるようになっているところが怪しい。

大正の初期のある一時期に、紳士や貴夫人の大半が博徒化した時代があったそうで、そういう連中が、ここで風雅な四季のながめに耽っていたのだろうと、知ったようなことをいうものもあったが、それは真相ではなかった。

養父の与惣兵衛は、陣笠以下の、名もなき並び議員のくせに、いわれのない事大思想にとりつかれて、政界の大立物ででもあるかのような錯覚をおこし、刺客の急襲を恐れて、しょっちゅう、ビクビクしていた。用途不明の半地下式の隔室は、四十七士の襲撃における、吉良上野介の雑倉にあたるもので、一旦緩急あれば、逆落しにここへ落ちこんで、あやうい生命の狭戸をすり抜けようという、よく考えたドデンの場なのであった。

吉良の雑倉は、戦中は、防空壕に使われていた。焼夷弾を、どんなものだと思っていたのか、地面から三尺上った柿葺きの屋根伏せに、古畳を積んで天水桶を置き、なんのつもりか、地下室の壁に大きな神棚をつくりつけた。