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わがやのらくえん
我が家の楽園
久生 十蘭
「オール読物」1953(昭和28)年1月〜6月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 90,195 字 · 175 页
その日の夕方、同家の細君と長女が、ケチンの灯用線に電気オーヴンをつなぎ、約一時間ほど電熱を使用したが、たまたま天井裏の電線は、明治三十何年かに配線したままの老朽線だったので、被覆の欠損したところから漏電して、大事にいたったものだろうという見込みだったが、それにしては、出火の時間が遅すぎる。漏電に見せかけているが、ただの失火ではないらしいと考えているとき、前夜、石田氏が細君に向って、
「こんな穢らわしい家は、火をつけて焼いてしまうからそう思え」
と、いったという聞きこみがあったので、話がうるさくなった。
出火の翌朝、警察は事情を聴取るだけで、深いところには触れず、
「とりあえず、消防署と両隣りぐらいに挨拶をしておいていただきましょうか。それで結構ですよ」
という程度で帰してくれたが、調査をすすめるにつれて、いろいろと思わしくない事情が出てきたので、いい加減なことではすましておけなくなった。
接収家屋の復原問題では、石田氏と調達局の間でむずかしい掛合いになっているが、調達局にたいする石田氏の態度はいつも威嚇的で、連合国の手代を困らしてやろうと意図しているとしか思えないような、反米的なひねくれかたをする。