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われにそむく

我に叛く

宮本 百合子

「太陽」1921(大正10)年9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 29,414 字 · 59 页

青空文庫

と云うに違いないから、彼女は、猶それを云わせるに堪えないような心持がしたのである。けれども、或る日、国元へ手紙を書くと云って真木がペンを取あげ、

「それでは、貴女も行くと云ってやっていいね」

と念を押した時、ゆき子は、とっさの決心で、

「さあ……」

と云った。そして、雑誌を読んでいた隣室から、彼の傍に来て坐った。

「――若し、私がおやめにしたら、貴方もおやめになさって?」

ゆき子は、良人の顔を見ながら、静に訊いた。

「止めようというの?」

「今度だけは、そうして見たらどうかと思うの。――でも、若し、貴方までお止めになさるなら……」

「僕までやめるには及ぶまいが――どうしたんだね、急に」

ゆき子は、彼女が理由とするところを説明した。

「まだ、いい塩梅にお父さまには云ってあげてないでしょう? だから貴方さえそうしてもいいとお思いになれば、私は遺って見たいわ。……一旦行くと云って、ほんとに悪いけれど」

「そんなことは拘わないが……」思いがけない変更で、稍々(やや)不愉快そうな顔をしていた真木は、ここまで来ると、不意に、苦笑に似た笑を口辺に浮べた。

「それにしてもここに一人でいられるかね」