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われにそむく
我に叛く
宮本 百合子
「太陽」1921(大正10)年9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 29,414 字 · 59 页
と訊き返した。彼女の声と眼差しとには、何か「いけない」とはいわせない力が籠っている。
真木は、
「若し貴女が考えて見て、その方がいいと思ったら、勿論そうした方がいいだろう」と云った。
「それで、ここはどうするつもり、矢張り依田君に来て貰う?」
彼の調子は、クライシスを通り過ぎた平穏さに還って来た。ゆき子も、自ら和らがずにはいられなかった。
「それで好かないでしょうか。どうせ二人行くにしてもそうするつもりだったのですものね。――郵便や何かは、朝×町へ帰る時持って来て貰えばいいわ」
「ふむ――じゃあ、まあ、兎に角そうして御覧。若しそれでうまく行けば結構だ」
「ほんとにそうよ! 何といっても私には生れた処ですものね、きっといい工合だと思うわ、そうお思いにならなくって?」
「そうあるべき筈だね。――」真木は、疑わしそうに云った。「が、とにかく一人で行くと定めていたってしようがないから、一寸×町へ行って都合を伺ってきたらいいだろう――僕は父親へ手紙を書いてしまうから……」
「そう?」ゆき子は、すぐ立ち上って「それじゃあ、すまないけれど、お父うさまに、訳を云ってあげて頂戴ね。