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わがやのえんげい
我家の園芸
岡本 綺堂
「サンデー毎日」1935(昭和10)年6月10日号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,666 字 · 8 页
まあ、笑わないで聴いてもらいたい。
先ず第一には糸瓜である。私はむかしからへちまを面白いものとして眺めていたが、自分の庭に栽えるようになったのは十年以来のことで、震災以後、大久保百人町に仮住居をしている当時、庭のあき地を利用して、唐蜀黍の畑を作り、へちまの棚を作った。その棚は私自身が書生を相手にこしらえたもので、素人の作った棚が無事に保つかといささか不安を感じていたところが、棚はその秋の強い風雨にも恙なく、へちまの蔓も葉も思うさま伸びて拡がって、大きい実が十五、六もぶらりと下ったので、私たちは子供のように手をたたいて嬉しがった。
その翌年の夏、銀座の天金の主人から、暑中見舞として式亭三馬自画讃の大色紙の複製を貰った。それはへちまでなく、夕顔の棚の下に農家の夫婦が凉んでいる図で、いわゆる夕顔棚の下凉みであろう。それに三馬自筆の狂歌が書き添えてある。
なりひさご、なりにかまはず、すゞむべい
風のふくべの木蔭たづねて
これを見て、わたしは再びへちまの棚が恋しくなったが、その頃はもう麹町の旧宅地へ戻っていたので、市内の庭にはへちまを栽えるほどの余地をあたえられなかった。