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わがやのえんげい
我家の園芸
岡本 綺堂
「サンデー毎日」1935(昭和10)年6月10日号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,666 字 · 8 页
そのまま幾年を送るうちに、一昨年から目黒へ移り住むことになったので、今度は本職の植木屋に頼んで相当の棚を作らせると、果してその年の成績はよかった。昨年の出来もよかった。
私の家ばかりでなく、ここらには同好の人々が多いとみえて、所々に糸瓜を栽えている。棚を作っているのもあり、あるいは大木にからませているのもあり、軒から家根へ這わせているのもあるが、皆それぞれに面白い。由来、へちまというものはぶらりと下っている姿が、何となく間が抜けて見えるので、とかくに軽蔑される傾きがあって、人を罵る場合にも「へちま野郎」などというが、そのぶらりとした所に一種の俳味があり、一種の野趣があることを知らなければならない。その実ばかりでなく、大きい葉にも、黄い花にも野趣横溢、静にそれを眺めていると、まったく都会の塵の浮世を忘れるの感がある。糸瓜を軽蔑する人々こそかえって俗人ではあるまいかと思う。
次は百日草で、これも野趣に富むがために、一部の人々からは安っぽく見られ易いものである。梅雨のあける頃から花をつけて、十一月の末まで咲きつづけるのであるから、実に百日以上である上に、紅、黄、白などの花が続々と咲き出すのは、なんとなく爽快の感がある。