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あるおんな
或る女
有島 武郎
1(前編)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 149,981 字 · 295 页
あちらへ着いたらわたしまたきっとどうともいたしますから。きっとそんなに長い間御迷惑はかけませんから。いかが、引き受けてくださいまして?」
古藤は少し躊躇するふうで五十川女史を見やりながら、
「あなたはさっきから赤坂学院のほうがいいとおっしゃるように伺っていますが、葉子さんのいわれるとおりにしてさしつかえないのですか。念のために伺っておきたいのですが」
と尋ねた。葉子はまたあんなよけいな事をいうと思いながらいらいらした。五十川女史は日ごろの円滑な人ずれのした調子に似ず、何かひどく激昂した様子で、
「わたしは亡くなった親佐さんのお考えはこうもあろうかと思った所を申したまでですから、それを葉子さんが悪いとおっしゃるなら、その上とやかく言いともないのですが、親佐さんは堅い昔風な信仰を持った方ですから、田島さんの塾は前からきらいでね……よろしゅうございましょう、そうなされば。わたしはとにかく赤坂学院が一番だとどこまでも思っとるだけです」
といいながら、見下げるように葉子の胸のあたりをまじまじとながめた。葉子は貞世を抱いたまましゃんと胸をそらして目の前の壁のほうに顔を向けていた、たとえばばらばらと投げられるつぶてを避けようともせずに突っ立つ人のように。