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あるむらのいつつのはなし
或る部落の五つの話
佐左木 俊郎
「文学時代」1929(昭和4)年10月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,917 字 · 12 页
」
「俺は、人間様だからな。そんな、稲荷だなんて、狐に頭を下げて頼むのなんか、真っ平だ。俺には人間の力があるだで。」
湯沢医師が、住まいの方から、盆の上に二本の徳利を載せて来た。そして平三を宥めるようにして言うのだった。
「平三さん。悪いことは言わねえ。さあ、このお神酒をあげてお詫びをなせえ。酔っててのことだから、まだ取り返しは付く。さあ!」
「なんだと? お神酒だと? 酒なら俺が召し上がってやる。狐になんぞ、勿体ねえこった。」
そこへ彼の伜が来て、曳き摺るようにして彼を拉れ帰ったのだったが、彼はその晩、ひどく腹を病み、とうとうその明け方に死んだ。
五 薬を売る神
「――医業は仁術なり、――と言うが、被告はそれをどう心得ているのだ?」
裁判官は錆のある声で厳かに言った。そして、法の鏡に映る湯沢医師の言葉の真意を探ろうとの誠意を罩めて静かに眼を瞑った。
「はい。その通りで御座います。少なくとも、医術を修めました以上は、そんな風に役立てたいものだと思っておりました。併し農村へ参って開業いたして見ますると、農村では、医師の力よりも、神の力の方を信じられておりますので、それを利用して病患者を救いたいと思ったので御座います。