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あるむらのいつつのはなし
或る部落の五つの話
佐左木 俊郎
「文学時代」1929(昭和4)年10月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,917 字 · 12 页
」
彼は掌でばたばたと鳥居の柱を敲きながら矢鱈に身体をも打ち付けた。打ち付け打ち付け罵詈讒謗を極めて見たが鳥居は動かなかった。
「なんということをするだね? そんなことすると罰が当たりますぜ。おまえさん。大明神の顕然なのを知りなさらんのかね?」
祠の前に住んでいる湯沢医者が、髯を扱きながら縁先へ出て来て、食肉鳥のような声を絞った。
「知ってらあ! 知り過ぎてらあ! だから敲き壊してやるのさ。その、白狐だかなんだか、撲っ殺してくれっから。糞垂稲荷め!」
平三はそう言い返して、大手を振りながら祠の軒先まで蹌踉いて行った。そして彼は、そこの礼拝の座に立ち小便を始めた。
「まあ、まあ! なんてことをなさるんです? この顕然な御神前で……」
祠守りの女が、祠の中から叫んだ。
「御神前も糞もあっかい。狐の小屋の前で小便をすりゃあ、どうだっていうんだ。犬を返せ。犬を返せ。でねけえ、何もかも敲き壊すぞ。」
彼は祠の入り口まで立って来た湯沢医者の妻女に、吠え付くようにして言って、また祠の柱に身を打ち付けた。
「それは、あなたの思い違いというものですよ。あなたが、清次郎さんに負けないように、お祈りをすれば、いいことなんですからね。