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あるむらのいつつのはなし
或る部落の五つの話
佐左木 俊郎
「文学時代」1929(昭和4)年10月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,917 字 · 12 页
「なんだね? 清次郎氏。おめえ、半纒さまで禿頭としたのかね? 禿頭なら、その頭だけで沢山なようなもんだが……」
髯面の男は、おかしさを抑えながら口尻を歪めて言うのだった。
「ふむ。そう馬鹿にしてもらいますめえ。」
清次郎は、むっとして首の手拭いを払い除けて見せた。
「平三氏! 判然と見て置いてもらいてえもんだな。こうなら解んべから。」
「ほお、上に判然と書いてあるんだね。俺は、頭の上が禿げて見えねえから、禿頭かと思って。――大頭なのに、小頭と言うのも……」
「平三氏! そんなことを言うとおめえこそ笑われるぞ。コアタマと読む奴がどこの世界にあって。こりゃ、誰が見たってコガシラじゃねえか?」
「なるほど。――ときに、どんな役目なんだね、その小頭っていうのは?」
平三は無闇と口尻を歪めながら言った。
「どんな役目だか、まあ見てれば今にわかるさ。」
清次郎はこう五月蠅そうに言い捨てて行ってしまった。
まもなく教練が始まった。
「集まれい! きをつけ! 右いならえ!」
騎兵軍曹あがりの組長の号令で、消防手は整列した。小頭を先頭にして、幾組もの横列縦隊が出来た。
「右むけい……おい!」