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せんじょう
戦場
夢野 久作
「改造」改造社、1936(昭和11)年5月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 25,769 字 · 51 页
その青冷めたい光りに照し出される白樺の幹の、硝子じみた美しい輝き……その周囲に展開されている荒涼たる平地の起伏……それは村落も、小河も、池も、ベタ一面に撒布された死骸と一所に、隙間なく砲弾に耕され、焼き千切られている泥土と氷の荒野原……それが突然に大空から滴たり流れるマグネシューム光の下で、燐火の海のようにギラギラと眼界に浮かみ上っては又グウウ――ンと以前の闇黒の底に消え込んで行く凄愴とも、壮烈とも形容の出来ない光景を振り返って、身に沁み渡る寒気と一緒に戦慄し、茫然自失しているばかりであった。天幕の中に帰って制服のまま底冷えのする藁と毛布の中に埋まってからも、覚悟の前とはいいながら、自分は何という物凄い処に来たものであろう。いったい自分は何という処に、何しに来ているのであろう……といったような事をマンジリともせずに考えながら、あっちへ寝返り、こっちへ寝返りしているばかりであった。
しかし夜が明けると間もなく、程近いキャムプの中から起出して挨拶に来た私の部下の話で一切の合点が行ったように思った。
私の部下というのは、私とは正反対に風采の頗ぶる立派な、カイゼル髭をピンと跳ね上げた好男子の看護長で、その話ぶりは如何にも知ったか振りらしい気取った軍隊口調であった。