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とびら

扉

小川 未明

「早稲田文學」1910(明治43)年4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,143 字 · 17 页

青空文庫

」

AとCは、互に顔を見合った。

「Kはどういう人物だろう。」とAがいった。

「さあ……分らない。」とCの眼が怪しく光った。

「Kが殺したのだろう。」とSが言った。

「いや決してそんなことはない。」とAが打ち消した。

「夜が明けたら分る。」とCが言った。

「僕らは余りKを信じ過ぎていた。Bは平常Kを嫌っていた。僕はKを余り好かない。用心しなければならぬ。」とSがいった。

「夜が明けたら分るだろう。」

といって、A、C、SはBの扉の前を去った。

嵐は、益々募った。

白い床の上に、闇の中にBが横たわっていた。全くこの室には微かな音すらなかった。青腫れのした肥った体が半分床の外に出ていた。彼はしっかりと小さな罎を握っていた。

それはコロロホルムの入っていた罎であった。その罎をしっかりと握っていた手は床の外に出ていた。

嵐の音が益々激しくなった。この怪物の家が揺ぎ始める。

灰色の漠然とした大きな影! 目もない、口もない、鼻もない巨人がBの枕許に立った。曾つて、Bが、Kの室に入りかけた時、後方に立った影であった。

「早く、その罎を隠せ!」

音なく、冷やかに、闇の中に横たわっていた体と、その手が動いた。